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月別アーカイブ: 2025年4月

栄達鋼業のここがミソ~part12~

皆さんこんにちは!
栄達鋼業、更新担当の中西です。

 

さて

栄達鋼業のここがミソ~part12~

確認事項

ということで、今回は、鉄骨加工工事における設計から施工までの「事前確認事項10選」を、現場経験をふまえて解説します♪

 

鉄骨工事は、「建物の骨組み=構造そのもの」をつくる極めて重要な工事。
しかし、その品質と安全、工程のすべては、実は“施工前の確認”によって左右されていると言っても過言ではありません。


鉄骨加工工事とは?──加工精度が構造物の信頼を決める


鉄骨加工工事とは、設計図に基づき、H形鋼や角鋼管などの鋼材を切断・孔あけ・溶接・組立し、現場で建方できる状態に仕上げる工事です。

加工の段階で1mmのズレがあれば、それは建物全体に“ひずみ・接合不良・耐震性能低下”などの深刻な影響をもたらします。

だからこそ、「事前確認の徹底=品質確保の第一歩」なのです。


鉄骨加工工事における事前確認事項《10の重要ポイント》


✅ ① 設計図と製作図の整合性チェック

  • 柱・梁・ブレースなどの部材位置と寸法は合っているか?

  • プレートのサイズ、ボルト孔位置、溶接記号が明確か?

  • アンカーボルト配置や基礎との取り合いに矛盾はないか?

📐 設計図だけで加工するとミスが出やすい。製作図(工作図)の正確さが鍵です。


✅ ② 鋼材の規格・材質・等級の確認

  • 使用する鋼材(SS400/SN490/SM490など)が設計通りか?

  • 板厚・断面形状・長さの確認

  • 高層・耐震建物の場合、SN材(溶接性に優れた材)が指定されていることも

🧾 材料ミルシート(材質証明書)の整合性確認は、検査や瑕疵責任に関わります。


✅ ③ ボルト・溶接仕様の確認

  • 高力ボルト(F10T/トルシア型)の規格と本数

  • 溶接長さ・脚長・位置(全周/片側)などの溶接設計の明記

  • 溶接部の非破壊検査(超音波探傷 UT、浸透探傷 PT)の範囲確認

🛠️ 現場溶接ではなく工場内溶接を優先する設計にすることが、精度と安全性の面で有利です。


✅ ④ 製作順序・建方工程との整合

  • 重量部材の搬入順、組立順、建方ローテーションの確認

  • 仮ボルト・建て起こし金物・クレーン計画との連携

  • 狭小地や都市部では、搬入制限や時間制限があるため要注意

🚧 加工が終わっても「運べない・建てられない」では意味がない。工程とのリンクが重要です。


✅ ⑤ 検査体制と品質管理ルールの確認

  • 加工後の自主検査/第三者検査/発注者検査の内容とタイミング

  • 材料受入・切断・孔あけ・組立・塗装・出荷の各段階での記録保存

  • 記録媒体(写真/報告書/管理表)の形式確認

📋 全件検査が必要か、抜き取り検査でよいかなど、契約書・仕様書に準じて確認しましょう。


✅ ⑥ 錆止め・塗装・防火処理の有無と仕様

  • 防錆処理は亜鉛めっき・ジンクリッチ塗装などの指定あり?

  • 塗装の塗膜厚・回数・乾燥時間の仕様確認

  • 耐火被覆処理(吹付けロックウール・耐火塗料)との関係

🎨 鉄骨は「むき出し」では使えない。仕上げ材との納まりや塗装工程との連携も設計時に検討すべきです。


✅ ⑦ 運搬・搬入条件の確認

  • 最大長さ・重量により特殊車両通行許可が必要か?

  • 夜間搬入やクレーン使用の有無

  • 現場仮置きスペース・吊り上げ順の確認

📦 「加工精度」がいくら良くても、現場に運べなければ工程は破綻します。


✅ ⑧ 現場建方に必要な付属部品の確認

  • 仮設材、建て起こし用チェーン、スペーサーの準備

  • クレーン接続金具、玉掛け位置の明示

  • 鉄骨建方計画(安全帯使用・足場計画との連携)

👷‍♂️ 「設計が終わったら終わり」ではない。現場の段取りまで設計に落とし込むのがプロの仕事です。


✅ ⑨ トラブル時の対応手順と責任範囲

  • 図面変更・追加工・溶接不良時の再加工手順

  • 発注者・設計者・施工者の責任区分と承認フロー

  • 再納品時の工程影響と費用負担の取り決め

📌 リスクを「ゼロ」にするのではなく、起きたときの対処を想定しておくことが重要です。


✅ ⑩ 書類提出・報告義務の確認

  • 検査報告書、溶接記録、写真帳、ミルシートの提出期限

  • 国交省や建築基準法に基づく中間検査・完了検査対応書類の整備

  • 電子納品(PDF・CAD・写真)形式への対応有無

📝 デジタル対応も進む中、書類整備力は“施工力の一部”とみなされる時代です。


「確認」がある現場には、「信頼」と「品質」がある


鉄骨加工工事は、材料→加工→出荷→建方と進む中で、後戻りができない一発勝負の連続です。

だからこそ、「施工が始まる前」にどれだけ準備できているかが、工事全体の成否を分ける最大のポイントになります。

  • 図面と製作内容の整合性

  • 材料の品質と入荷確認

  • 現場との情報共有と建方手順の明確化

そのすべてが、“設計だけでは見えないリスク”を先に潰す力になります。

 

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栄達鋼業のここがミソ~part11~

皆さんこんにちは!
栄達鋼業、更新担当の中西です。

 

さて

栄達鋼業のここがミソ~part11~

設計

ということで、鉄骨加工工事における設計の役割・工程・注意点・最新動向までを、現場視点と設計者目線の両面から深く掘り下げてご紹介♪

 

【鉄骨加工工事の品質は設計で決まる】

建物を支える“骨”を正確に組み上げるための鉄骨設計とは?

鉄骨構造は、鉄という強靭な素材を用いて、建物の「骨組み=構造躯体」を形成します。
その重要性ゆえに、1ミリのズレが建物全体の精度や安全性を左右する極めて精密な工程が求められます。

そして、この精度を支えているのが「設計」の力。


鉄骨工事における「設計」とは何をするのか?


■ 設計=「図面を描くだけ」ではない

鉄骨工事における設計は、ただ構造図を描くことではありません。
その役割は多岐にわたり、以下のような要素が含まれます:

  • 構造設計図を基にした製作可能な加工図の作成(製作図・詳細図)

  • 部材の材質・断面形状・溶接仕様・接合方法の選定

  • 建物の形状・用途・荷重条件に応じた強度・剛性の確保

  • 製作・運搬・現場建方の施工性・安全性の配慮

📐 設計段階での判断が、現場作業のスムーズさや建物全体のコスト、精度、耐久性に大きく関わってきます。


鉄骨設計の主なプロセスと設計図面の種類


✅ ① 基本設計(構造設計)

  • 建築設計から与えられた建物形状・階数・用途をもとに、構造形式・柱や梁のサイズを決定

  • 地震・風圧・積雪などの荷重条件に基づく強度計算(構造計算)を行う

  • 使用鋼材(SS400、SN490、SM490など)と接合方式(溶接 or 高力ボルト)を設計

📘 この段階では「安全かつ経済的な構造計画」が最重要となります。


✅ ② 実施設計・構造図作成

  • 柱・梁・ブレースの位置と断面

  • 各部材の接合部ディテール(仕口・プレート・溶接長さなど)

  • アンカーボルトの位置・ベースプレートの厚み・基礎との取り合い

📏 図面化された内容は、鉄骨ファブリケーターが製作図を作るための基準となります。


✅ ③ 製作図(工作図・部材図・組立図)の作成

構造図を基に、実際に工場で鉄骨を製作するための詳細図面を作成します。

  • 部材図:H鋼・角鋼管・チャンネルなど各部材の長さ・加工寸法

  • 組立図:梁と柱の接合位置、ボルト孔の配置、溶接記号

  • 配置図:現場での鉄骨の組立順序・部品番号・建方手順の基礎

📐 製作図には「0.1mm単位の寸法精度」「溶接方法」「孔明け位置」などが厳密に記載されます。


設計時に押さえておくべき5つの重要ポイント


✅ 1. 溶接設計と応力伝達の理解

  • 溶接長不足や配置ミスにより、応力が集中し破断のリスクが高まる

  • 高力ボルト併用部との関係を把握し、合理的な接合ディテール設計が必要

🛠️ 「どの方向からどの力がかかるか」を理解して、設計に落とし込むことが肝心です。


✅ 2. 建方(現場組立)の施工性を意識した設計

  • 重量バランスのとれたユニット設計

  • ボルト位置やプレート形状を現場作業者の手順・姿勢で考える

  • 仮ボルト位置・建て起こし金物の干渉有無などを図面で確認

👷‍♂️ 設計は「描くこと」ではなく、「現場を動かすための準備」です。


✅ 3. 部材製作の合理性(加工性)を考慮する

  • 曲げ・切断が難しい形状/穴あけが密集したパターンの回避

  • 既製品鋼材サイズに合わせた最適寸法

  • 現場溶接より工場溶接で完了できる設計が高品質

📦 設計段階で製作工場の声を取り入れると、加工コスト削減と精度向上が同時に実現します。


✅ 4. 熱伸縮・地震動などの変形への配慮

  • 高さ10m超の鉄骨柱は熱による伸縮(1mm~数mm)を想定

  • 制振構造・耐震構造ではブレース配置や減衰装置設置の余裕寸法を設計に反映

📐「動かない構造」ではなく、「適切に動いて壊れない構造」を設計することが求められます。


✅ 5. 建築設計・他工種との調整(納まり設計)

  • スラブ・外壁・設備配管との干渉チェック

  • ファイヤーストップ/防火区画の納まり確認

  • サッシ開口や階段・エレベーターピットとの鉄骨接合納まり

📋 鉄骨設計は建築全体の「調整役」でもあるという自覚が必要です。


鉄骨設計の最新動向と技術トレンド


◆ BIM(Building Information Modeling)の活用

  • 3Dモデル上で部材の接合・干渉チェックが可能

  • 製作図・積算・工程管理まで連携したトータル設計が主流に

  • 現場とのデータ共有により、設計変更のスピードが劇的向上

💡 「図面」から「データモデル」へ。設計者と施工者の垣根を越える時代です。


◆ SDGs・環境配慮型設計

  • 軽量化設計による資源削減

  • 鉄のリサイクル特性を活かした脱炭素建築への対応

  • 施工廃材削減を前提とした設計

🌱 構造設計も“環境配慮の時代”に突入しています。


鉄骨設計とは、「未来の安全と施工性」をつくる仕事

鉄骨加工工事における設計は、
「建物が倒れないように設計する」だけではなく、
工場が作りやすく、現場が組み立てやすく、安全に運用できるように設計する」という、極めて多面的な業務です。

  • 数字の裏にある“人”の作業を考える

  • ディテールの先にある“構造全体”を見据える

  • 設計図が、現場と建物の“言葉”になる

それが、私たちが大切にしている「鉄骨設計の本質」です。

 

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